路線バスに限らずバス業界は慢性的な
運転士不足と言われている。
その要因については規制緩和による
新規参入事業者が増えたことによる
価格競争が背景にあるのは
悲惨な事故が起こる都度メディアを通じて
報道されるので周知のことだと思う。
ちなみに、規制緩和によってどれくらい
既存のバス業界が”損害”を受けたか
バス協会の資料をもとに紹介しよう。
規制緩和前、貸切バスにおける
一日一車当りの営業収入はピーク時
10万9千円(平成4年)にも上った。
しかし、バブル崩壊による不況により
右肩下がりを続け、平成10年には
8万円を割り込むことに。
さらに規制緩和が追い打ちをかけ、
平成14年にはピーク時の半値以下となる
4万円台まで収入が落ち込むことになる。
結果、事業者はコスト削減を迫られ
人件費削減
↓
離職・応募者の減少
↓
残された運転士の負担増
↓
過重労働
入社してもすぐ辞める
↓
離職・応募者の減少
↓
・
・
と言う悪循環を招いているわけだが
賃金はともかく、過重労働に歯止めを
かけるために日本には「労働基準法」
と言う法律がある。
簡単に説明すると
●労働時間は1日8時間まで。
●労働時間は1週40時間まで。
●8時間を超える労働には1時間の休憩を。
●有給休暇を与えなければならない。
などと言う基準であり、社会人には
非常に身近な法律とも言える。
さて、そんな労働に関する基準を定めた
労働基準法だが、バス運転士に対しては
労働基準法とは”別”に基準が定められている
のはご存知だろうか?
正式には『自動車運転者の労働時間等の
改善のための基準』と言う厚生労働省が
定めている基準(告示)であり、
バスの他、タクシー・トラック事業にも
同じような基準が存在する。
ここには、走行距離・休憩・運転時間などの
基準が細かく定められており、
運転士の乗務割(シフト)を組む配車係は
この基準を遵守しなければならないのだが、
この基準を冷静に読んでいくと過酷な乗務を
行政が容認していることがわかる。
あまりに基準が細かいので
すべては説明しないが
一番わかりやすい例が拘束時間である。
まず、労働基準法では労働時間(実働)は
●1週40時間まで
●1日8時間まで
と定められている。
しかし、前述の改善基準によると
バス運転士の最大拘束時間は
●4週平均で1週65時間
●1日13時間、最大16時間まで(条件付)
となっており、労働基準法で定めている
労働時間を遥かに上回る勤務を
容認しているわけだ。
もっとも、医療・営業職・娯楽業など
バス運転士以上の激務を強いられている人が
いることも理解しているので
「バス運転士だけが…」
と、声高に言うつもりはないが、
そもそもバス運転士をはじめとする
輸送業は労働基準法では例外として
扱われている職種であることを
理解していただければ幸いである。
そして、賃金が相応でなければ
なり手がいないのは当然とも言える。