「降車ボタン」は降りるときに押してね。子供を注意する大人にホッとした話

ある昼下がり、
始発のバス停で出発を待っていると
ドアのステップを上るのがやっとと言う
ちいさな子供と老夫婦が乗車してきた。

子供は幼稚園児くらいで、
老夫婦は子供の祖父母なのだろう。

なんとも微笑ましい。

乗車後、出発まで待機していると、

「ピンポーン♪」

と降車を知らせるベルが鳴り響く。

恐らく、子供が間違って降車ボタンに
触れてしまったのであろう。

ちなみに、乗客は子供と老夫婦しかいない。

私は、何も言わずリセットボタンを押して
降車ランプを消灯させる。

しかし、数秒後

「ピンポーン♪」

(あれっ? また、間違えたのかな?)

再び、何も言わずリセットボタンを押して
降車ランプを消灯させる。

しかし、また

「ピンポーン♪」

(おいおい…)

無言でリセットしていたこともあり
子供が降車ボタンを押していることに
老夫婦は気が付いていない様子だった。

そのため、

「ごめんなさい。ボタンは降りるときに
押してくださいね。」

と、優しくアナウンスを入れて
リセットする。

ここで老夫婦も事態に気が付いたようで

「あっ、ごめんなさい。」
「りょう君、これ触っちゃダメだよ!」
「なんで?」
「降りるときに押すボタンだからね」
「ほら、運転士さんにあやまって…」

と、老夫婦が子供に言い聞かせるが、
子供はどうしてもボタンが押したい様子だ。

(まぁ、仕方ないよね。)

そして、出発。

しばらくして…

「りょう君、だから押したらダメよ!」
「えーー、押したい!」

やはり、子供はボタンを押したいらしい。

余談だが、ボタンを押すとどのような
結果になるかを見届けることによって
満足感を得る心理が影響していると
聞いたことがある。

(一層のこと、点検モードにして好きなだけ
降車ボタンを押してもらおうか?)

と言う親切心も頭をよぎった。

ちなみに、点検モードとは、
すべての降車ボタンが正常に作動するかを
点検するときに使用するモードで、
点検モード時に降車ボタンを押すと
運転士がリセットボタンを押さなくても
勝手にリセットしてくれる。

点検モードを使用することは滅多にないが、

「降車ボタンが反応しなかった」

と乗客から指摘され点検するときに
使用することがある。

色々なことを考えつつ
しばらく運転していると
子供は最後部の座席に移動した。

しかし、車内ミラーで見ると靴を履いたまま
座席の上に立とうとしている。

(あらら…)

だが、それに気が付いた老夫婦が

「靴脱がなきゃダメよ!」

と言って靴を脱がせる。

(気が付いてよかった。)
(注意しなかったらどうなっていたか…)

そうこう考えるうちに
目的のバス停に到着し一家は降りていく。

昨今、

・子供を注意しない親
・モンスターペアレント
・運動会で飲酒する親

など、親(大人)のモラルが
取り沙汰されることがあるが、
子供を注意する大人の姿を見て
ほっとしたのが正直なところである。

プロフィール

長年勤めたウェディング業界から路線バス運転士に転職したアラフォーの「こーくん」。メルマガのバックナンバーを公開しています。
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