「毎回遅れて迷惑だよ!」遅延証明書では怒りが収まらない乗客の話

日本の鉄道は秒単位で運行されており、
その正確性は世界屈指である。

そのため利用者の多くは台風や大雪を除き
普段の生活で列車が遅れることへの
想定や対策はしていない(信頼している)
のが現状である。

これは定時運行を支える鉄道事業者や
現場の鉄道員による努力の賜物であり、
日本が世界に誇れる部分であると思う。

しかし、この考え方を路線バスに
当てはめるのはやめていただきたい。

路面電車など特殊なものを除き、
鉄道は他の交通に支障されない私有地に
敷かれた線路を走るのが一般的だ。
当然、定時運行は比較的確保しやすい。

一方、バスはマイカー・自転車・歩行者など
不特定多数が利用する”公道”を走るため
交通量や信号によって時間通りに走ることが
難しい性質がある。

このことはここで解説するまでもなく
一般常識の範囲であると思っているが、
それでもバスが遅れたことに対して
文句を言ってくる乗客は後を絶たない。

ある朝の乗務でのこと。

乗客・道路とも比較的混雑していたこともあり
その乗客がお目当てとしていたバス停に
10分ほど遅れて到着した。

到着するとすぐに

「運転士さん、遅延証明書いてよ!」

と、少々荒い口調で私に行ってくる。
誰が聞いても立腹してるような感じだ。

ちなみに、遅延証明書を要求されることは
ほとんどないので普段は乗務員カバンの
奥深くにしまっているのだが、
要求されそうな空気が漂っているときは
すぐに書けるよう運転席横に用意している。

余談になるが、
バスの遅延証明を会社に提出したところで
遅刻が免責されることはほとんどないだろう。

そのため、遅延証明を要求する人の多くは
遅れたことを事業者側に認識させる意味で
要求(応報)しているように思う。

話は逸れたが、

「ご迷惑をおかけしました」

数秒ほどで遅延証明を発行し一言添えるが、

「本当、”毎回迷惑”だよ!」

間髪入れず捨て台詞を吐いて
小銭を運賃箱に入れようとする。

しかし、よほど興奮してたのか、
手に持っていた小銭を床に落としてしまった。

(それで、遅れが増大するんだよ!)

と、小銭を拾う乗客に冷たい視線を送り、
乗客も気まずさを感じたのが、
何も言わず慌てて降りて行く。

「ありがとうございました」

心がこもっていない挨拶をして出発したが、
休憩室で他の運転士に愚痴を話すまで
モヤモヤ感は晴れなかった。

と言うのも、
ラッシュにも関わらず一日中同じ所要時間で
ダイヤを設定しているのなら、

「毎日走っているなら渋滞はわかるだろ!」
「渋滞を考慮してダイヤを作れ!」

と言われても仕方ないと思う。

しかし、この路線は混雑を想定して朝夕は
運行時分に余裕を持たせてある。

また、”毎回迷惑”と言う割には
定期券でも回数券でもなく現金精算だ。

さらに乗ってきたバス停も
普段は乗降客が少ない所であるため、
たまたまその日はバスを使った人なのだろう。

「あなたの行動時間に余裕がなかっただけ!」

だと私は思う。

最後に、
鉄道のようにダイヤの定時性を確保するなら
BRT(バス高速輸送システム)など
専用道を走る以外に方法はないが、
現実的には無理であろう。

このような状況下で
理不尽と感じる乗客の罵声雑言も
運転士は耐え忍ばないといけないのは
なんとも辛いものである。

プロフィール

長年勤めたウェディング業界から路線バス運転士に転職したアラフォーの「こーくん」。メルマガのバックナンバーを公開しています。
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